リベラルアーツカレッジとは?特徴やアメリカの大学例を紹介
「リベラルアーツ」とは、「一般教養」を指す言葉です。アメリカには、リベラルアーツを学べる「リベラルアーツカレッジ」がたくさんあります。総合大学とは異なり、リベラルアーツカレッジは入学時に専攻を決める必要がなく、幅広い科目の中から自身の興味があるものを選んで学べるのが魅力です。
この記事ではリベラルアーツカレッジの特徴やメリット・デメリット、卒業後の進路などについて解説します。
リベラルアーツカレッジとは?
リベラルアーツカレッジはアメリカ特有の大学制度で、一般教養課程を主体とした大学を指します。学生の人格形成や人間力の向上をより重視していて、幅広い学習内容により、豊かな教養や人間性、リーダーシップを育成することを目的としています。
リベラルアーツカレッジでは専門分野にとらわれず、興味関心のあることを幅広く学ぶことができます。リベラルアーツカレッジの多くは小規模で、学生数は数百人から3000人程度のところがほとんどです。
また、豊かな自然を持つ郊外や田舎にキャンパスがあるところが多いのも特徴です。リベラルアーツカレッジには学部がなく、入学してから自分の興味を深めていくことができます。
専攻は2年終了時までに決めればよく、もちろん一度決めた専攻を変更することも可能です。なかには、リベラルアーツカレッジで一般教養を身につけたあと、別の大学や大学院に進学して専門性を究める人もたくさんいます。
リベラルアーツとは?現代社会で求められる教養を身につけるための学び方
リベラルアーツカレッジの5つの特徴
ここでは、リベラルアーツカレッジの特徴を5つ紹介します。
少人数クラスでアットホームな雰囲気
リベラルアーツカレッジは少人数クラスで授業が行われることが多く、アットホームな雰囲気が魅力です。
アメリカの総合大学は数千人から数万人規模の学校が多いのに対し、リベラルアーツカレッジの学生総数は500〜3000人程度と割と小規模な学校が多いです。
1クラスの人数も10〜12人程度、多くても30人程度で、クラスメイトとも交流しやすいのが特徴です。また、少人数制のクラスだからこそ教員の目も行き届きやすく、より丁寧な指導を受けられます。
教師との距離が近いため、質問や相談があるときにも声をかけやすいでしょう。
多分野の内容を学べる
リベラルアーツカレッジでは、入学時に専門分野を決める必要はありません。
総合大学に比べると、提供される科目が限られるといった面はあるものの、リベラルアーツカレッジではさまざまなクラスの中から、興味を惹かれることや学びたいと思えるものを自分で自由に選べるのが特徴です。
人文、自然科学、社会といった幅広い分野の基礎的な内容を高いレベルで学ぶ環境が整っており、習得した教養や知識をもって、多分野にまたがる問題を解決できる力も養えると期待されています。
また、まったくの初心者が、音楽や美術、演劇などの芸術分野を一から学ぶことも可能です。決められたコースを進むのではなく、自ら自由に学びたい人にぴったりの環境といえるでしょう。
全寮制で教員や他の学生との関係を築きやすい
リベラルアーツカレッジは全寮制の学校が多く、大半の学生が寮生活を送っています。入学時に住居探しをする必要がなく、学びに集中できる環境で、治安面でも安心して学生生活を過ごせます。
学生と教員の距離が近いため、丁寧なサポートや指導を受けられるのもリベラルアーツカレッジの特徴です。授業のほかにも、課外活動やスポーツ、ボランティアなどを通じて、教師やほかの学生たちと交流できる機会も豊富にあります。
また、共同生活を通して学生同士が仲良くなりやすく、生涯を通じた友人を得られるなど、豊かな交友関係を築きやすいでしょう。
参加型の授業が多い
リベラルアーツカレッジの大きな特徴は、参加型の授業が多いことです。
大学といえば教師が大勢の生徒に対して一方的にレクチャーする形態をイメージする人が多いかもしれませんが、リベラルアーツカレッジでは個人の意見を発表するディスカッションやプレゼンテーションなど、学生が主体的に参加できるタイプの授業が中心です。
グループワークも多いので学生は発言する機会が多く、人の話を聞くだけの受け身の授業は少ないといえます。
意見を述べたり他者と議論したりすることで、考える力や聞く力、表現力などが身につき、新しいものの見方や考え方に出会うことができます。
クラスは少人数のため、教師へ質問をしやすい雰囲気があるのも特徴です。
郊外にあり勉強に集中しやすい
リベラルアーツカレッジは郊外にあるところがほとんどで、勉強に集中しやすい環境が魅力です。郊外に広大なキャンパスを有している学校が多く、自然豊かな環境で過ごせます。
周辺環境が騒がしくない田舎の静かなキャンパスでは都会的な刺激や誘惑が少なく、落ち着いて勉強に集中できるでしょう。
繁華街からは離れている場合でも、全寮制のため生活に必要なものは揃っており、不便は感じないはずです。
リベラルアーツカレッジで学ぶメリットとデメリット
ここからは、リベラルアーツカレッジで学ぶメリットとデメリットを紹介します。
メリット
リベラルアーツカレッジで学ぶメリットは、入学時に専攻を決める必要がなく、幅広い知識を身につけて自身の教養や知見を広げられる点です。
基礎的な学問を中心に、哲学や心理学、歴史、物理学、数学、経営学、社会学、芸術など、あらゆる科目の中から自分の興味がある講義を選ぶことができます。
リベラルアーツカレッジでの学びは、特定の職業に結びつく専門知識や技術ではなく、将来的にさまざまな分野で活躍できる高い教養を身につけられるのが特徴です。入学後の2年間で自身の興味関心を見極め、3年次に専攻を決めるのが一般的です。
参加型の授業ではクリティカル・シンキングが鍛えられ、書く・話す技術の両面においてコミュニケーションスキルの向上が期待できます。
また、教授との距離が近いので、直接的に学べる機会が多いのもメリットです。
リベラルアーツカレッジは、「どの分野を学べばいいかわからない」「幅広く柔軟に学びたい」という人の学びの可能性を広げてくれるでしょう。
デメリット
リベラルアーツカレッジには多くのメリットがある一方で、専門的に学ぶのが難しいというデメリットもあります。
あくまでも教養を深めることを目的とする学校なので、総合大学のように入学時に専攻を決め、研究を重ねてエキスパートになるという学び方は難しいのが現状です。
学びたい専攻や研究テーマが決まっているという人は、その分野を専門的に学べる環境を選ぶのがよいでしょう。
もちろん、リベラルアーツカレッジでも関心のある分野を深掘りすることは可能ですが、学校を卒業するために必要となるその他の科目に時間を取られ、思ったように研究を進められないといったケースもあります。
自身の将来的なキャリアもしっかりと見据えたキャリアプランニングが必須です。
リベラルアーツカレッジへの留学が向いている人
何を学びたいかがまだ明確でない人は、リベラルアーツカレッジへの留学が向いているでしょう。
入学してから自分の方向性や適性、興味のある分野をじっくりと探せるので、焦らず学びを深めることができます。また、知識欲が豊富で幅広い分野に興味がある人、好奇心旺盛な人にもリベラルアーツカレッジは向いているといえます。
リベラルアーツカレッジではまったく異なる2つの専攻を選べるダブルメジャーや、2つの学位を取得できるダブルディグリーなどを採用しているところも多く、幅広く学ぶのに適しています。
ほかにも、教師との距離が近い学校で学びたい人や、多様な考え方や価値観を大切にしたい人、グループワーク・ディスカッションが多い授業を希望する人なども、リベラルアーツカレッジが向いている傾向にあります。
アメリカのリベラルアーツカレッジの例
ここからは、アメリカのリベラルアーツカレッジの例を3つ紹介します。
アマースト大学
アマースト大学は、マサチューセッツ州にある1821年創設の全米1、2位を争う名門リベラルアーツカレッジです。キャンパスは小規模ながら、卒業生にはピュリッツァー賞やノーベル賞などの受賞者も名を連ねています。一般教養科目や必須科目などはなく、学生自身がカリキュラムを組み立てる「オープンカリキュラム」制度を採用しているのが特徴です。40の専攻で学士号を提供しており、特に数学や経済学、心理学などが人気です。また、同校は近隣の大学と提携していて、大学があるアマーストの街は全米でも屈指のカレッジタウンを形成しています。
ポモナ大学
カリフォルニア州クレアモントにある、1887年創立の私立ポモナ大学。全米に名を馳せる名門校で、入学試験の合格率は10%以下という超難関校です。
48の専攻があり、なかでも人文学系の分野に強いとされています。特に人気なのは、社会科学や複合的/学際的研究、数学、統計などです。
同校は実践的な学びにも注力しており、無給のインターンに関しては大学が学生に給与を支払うといった制度もあります。ロサンゼルスから車で40分ほどの自然豊かな場所にあるキャンパスは勉強に集中できる環境といえます。
ウェルズリー大学
ウェルズリー大学は、マサチューセッツ州ボストン郊外のウェルズリーにある名門私立女子大学です。
1870年創立の同校は伝統ある名門女子大7校からなる「セブンシスターズ」の一校で、卒業生にはヒラリー・クリントンやマデレーン・オルブライトなどの著名人の名前も上がります。
創立以来、学長はすべて女性が就任しており、卒業生の強いネットワークがあるのも女子大ならではといえるでしょう。特にジェンダーについての研究や活動に力を入れており、近隣の名門校と提携していることから、自校で開講されていない授業は提携校で履修することも可能です。
ゴシック建築の大学建物は緑に囲まれており、「全米で最も美しいキャンパス」ランキングにも名を馳せています。
リベラルアーツカレッジを卒業した後の進路は?
リベラルアーツカレッジは学生へのサポートが行き届いているため、卒業率はもちろん、卒業後の就職率が高いのも特徴です。
卒業後の進路については教師や進路カウンセラーなどに相談することができ、適切な指導を受けられます。企業に就職するほか、さらに知識を深めるために大学院へ進学する学生も少なくありません。
リベラルアーツカレッジで習得した論理的な思考力や問題解決力などは、就職活動でも高く評価されるでしょう。
リベラルアーツプログラムで学ぶ分野を見極めよう
納得のいく進路選択をするためには、まずは自分がやりたいことや学びたい分野をしっかり見極めることが大切です。
自身の興味や関心があることを探り、それらを具体的な分野につなげていくとよいでしょう。
転職を考えている場合は、将来的にどんな仕事に就きたいのかなども考慮に入れ進路を決めるのがおすすめです。
ただ、リベラルアーツで学べることはとても多く、何を選べばよいかわからないという人も多いのではないでしょうか。
「LIBERARY」は多彩な講義動画を試聴できるため、学ぶ分野を見極めるのに適しています。
動画は月額定額で見放題なので、まずは関心のある講義を視聴してみてはいかがでしょうか。興味の対象が広がり、より学びを深めたい分野を発見できるかもしれません。
タグ: リベラルアーツ, リベラルアーツカレッジ