社会人の学び直しで支給される補助金とは?政府の支援制度を解説!
社会人で学び直しをしたいと考えているのであれば、補助金をはじめとする政府の支援制度について知っておくのがおすすめです。
補助金などの支援を受けることは、学び直しにかかる負担を軽減するのに役立ちます。
そこで今回は、社会人が学び直しをする際に利用できる、補助金などの政府の支援制度について詳しく解説します。
補助金が支給されるほど社会人に学び直しが必要な理由とは
政府から補助金が支給されるということは、それほどに社会人の学び直しが社会的に求められていることが窺えます。なぜ今、社会人の学び直しが必要とされているのでしょうか。
その理由について、本章では2つのポイントに焦点を当てながら解説します。
平均寿命が延びて長く働く人が増えている
医療技術の進歩や生活環境の改善などが影響し、平均寿命が伸びたことで「人生100年時代」とも呼ばれることが増えてきました。
従来であれば定年を迎えると同時に仕事から退くのが一般的だったものの、60歳を超えてもなお働き続ける人が少なくありません。
また、長寿命化すればするほど必然的に高齢者の医療費や年金などの社会保障費が増えるため、この負担を減らそうと年金の支給開始時期を段階的に後ろ倒しにし、定年を延長する政策も取られています。そして、長く働くためには、古くなった知識のアップデートも欠かせません。
時代に対応したビジネスパーソンとして長期的に活躍し続けるために、社会人の学び直しが注目されています。
社会が急速に変化している
IT関連技術の進化は非常に目覚ましく、急速に高度化しています。IT関連技術の高度化は半導体の性能向上に起因しており、半導体回路の集積密度はおよそ1年半~2年で2倍にもなるといわれています(ムーアの法則)。さまざまな分野において、わずか数年の間で新しい技術が次々に取り入れられているのです。
また、新型コロナウイルスの感染が拡大したときには、オンライン会議やテレワークへの対応が求められました。
社内での配置転換や異動、あるいは転職など、コロナ禍において人々の働き方は大きく変化し、この変化に対応するために新しいスキルや知識の学び直しの需要が拡大しているのです。
社会人の学び直しを難しくしている要素とは
学校を卒業して社会人になった後、学び直しのために再び大学、大学院、短大、専門学校などに入学すれば当然学費がかかります。学び直しによる経済的負担が大きくなるのは否めません。
実際に、内閣府が行った「令和4年度生涯学習に関する世論調査」において、社会人が学び直しをするために必要な支援として2番目に多かったのが「資格取得に対する経済的支援」という回答でした。
仕事と学習を両立する人がいる一方で、職場からは離れて勉強に集中したいという人もいるでしょう。ただ、必然的に収入が減ることになってしまうため、学び直しによる金銭的負担はさらに大きくなります。
また、先ほど挙げた内閣府の世論調査のなかでは、「労働時間の短縮や学習するための休暇制度などの充実」も社会人の学び直しで求められている支援として上位の回答でした。
つまり、社会人にとっては学び直しの時間そのものを確保するのが難しいという背景も見えてきます。
諸外国と異なり、日本では比較的退職や休職をせず、仕事と両立しながら学び直しをしたいと考えている人が多いため、より幅の広い学習時間の提供が必要とされています。
社会人の学び直しの補助金1:教育訓練給付金
社会人の学び直しの補助金のうち、「教育訓練給付金」というものがあります。
この補助金の内容について、詳しく解説します。
概要
教育訓練給付金(教育訓練給付制度)は、新しいスキルを習得したり、新しいキャリアを積極的に模索したりする人を支援する制度です。
厚生労働大臣が指定した講座を受講・修了した個人に対して、受講料の20〜70%を国が支援します。受講者の金銭的負担を極力抑えることで、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的としています。
オンラインで受講可能なものや、土日や夜間に受講できる講座もあるため、仕事と学びを両立したい人におすすめの制度です。
対象者
教育訓練給付金の対象者は、「雇用保険の被保険者もしくは離職してから1年以内の人で、今までに教育訓練給付を受けたことがない人および雇用保険の加入期間が1年以上の人」あるいは「雇用保険の被保険者もしくは離職してから1年以内で、今までに教育訓練給付を受けたことがある人は、前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上の人」いずれかの条件を満たす人です。
雇用保険の加入期間が満たない場合は、加入期間が経過した後にこの制度の教育訓練を受けられるようになります。
なお、パート・アルバイト・派遣労働者といった労働形態でも給付対象に含まれます。
対象講座
教育訓練給付金の対象講座の数は、約1万4000講座にも上ります。
医療・社会福祉・保健衛生関係(看護師や理学療法士など)、専門的サービス関係(中小企業診断士、キャリアコンサルタントなど)、技術・農業関係(土木施工管理技士、自動車整備士など)、事務関係(TOEIC、簿記検定試験など)など、非常に幅広いジャンルを取り揃えており、あらゆるニーズに応えることを目指しています。
どんな講座があるのか具体的に知りたい場合は、「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」を利用して調べてみましょう。
種類
教育訓練給付金は、レベルに応じて「一般教育訓練給付」「特定一般教育訓練給付」「専門実践教育訓練給付」の3種類に分けられています。
それぞれの内容について、詳しく説明します。
一般教育訓練給付
一般教育訓練給付は、雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象です。
英検、TOEIC、簿記、Webクリエイター能力認定試験、Photoshopクリエイター能力認定試験、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)、中小企業診断士、インテリアコーディネーターなど、比較的難易度が高くないものが多いです。
一定の条件を満たす方が、厚生労働大臣が指定する講座を受講し、修了した場合に給付金が支払われます。
なお、給付金額は受講費用の20%(上限10万円)で、訓練修了後に支給されます。給付申請も修了後に行うのがルールです。
特定一般教育訓練給付
特定一般教育訓練給付は、労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象です。
主な資格や講座の内容としては、社会保険労務士、税理士、司法書士、FP(ファイナンシャルプランニング)技能検定、宅地建物取引士、大型自動車免許、介護職員初任者研修などがあります。
また、給付金を受給するには「訓練前キャリアコンサルティング」の受講が必須です。
受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。
専門実践教育訓練給付
専門実践教育訓練給付は、看護師、介護福祉士、作業療法士、美容師、保育士、調理師、栄養士、キャリアコンサルタント、高度IT資格など、労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象です。
受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6カ月ごとに最長3年間支給されます。
また、資格の取得などを行い、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給されます。
つまり、この追加支給も含めた場合、受講費用の最大70%(年間上限56万円)、最大3年間で計168万円の支給となるのです。
さらに、失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練給付を受ける場合(通信制・夜間制は除く)、受講開始時に45歳未満であるなどの一定条件を満たせば、別途「教育訓練支援給付金」が支給されるので、もし当てはまりそうであれば詳しい条件を調べてみるといいでしょう。
社会人の学び直しの補助金2:母子(父子)家庭自立支援給付金
社会人の学び直しの補助金として、「母子(父子)家庭自立支援給付金」があります。
この補助金の内容について、詳しく解説します。
概要
母子(父子)家庭自立支援給付金は、母子(父子)家庭の母・父の能力開発を後押しする制度です。
母子家庭における母親は、就業経験が乏しいことなどから、生計を支えるための十分な収入を得ることが困難な状況に置かれている場合が多いです。
父子家庭も同様に困難を経験することが多いため、経済的自立を支援するための施策が実施されています。
対象者
母子家庭の母親または父子家庭の父親であり、現に児童(20歳未満)を扶養している人が給付対象です。
母子(父子)家庭自立支援給付金のうち「自立支援教育訓練給付金」は、児童扶養手当の支給を受けているか、あるいは同等の所得水準にある、就業経験、技能、資格の取得状況や労働市場の状況などから判断して、当該教育訓練が適職に就くために必要であると認められるという2つの要件を満たしていなければなりません。
また、一方で「高等職業訓練促進給付金」は、養成機関において1年以上(令和3年4月1日から令和5年3月31日までに修業を開始する場合には6カ月以上)のカリキュラムを修了し、対象資格を取得見込であることや、仕事または育児と修業の両立が困難であることなども要件に含まれています。
種類
母子(父子)家庭自立支援給付金の種類は、大きく分けて「自立支援教育訓練給付金」と「高等職業訓練促進給付金」の2つです。
自立支援教育訓練給付金は、対象教育訓練を受講し、修了した場合にその経費の60%が支給されます。
講座は、雇用保険制度の教育訓練給付に基づいて定められた内容のほか、その他都道府県等の長が地域の実情を鑑みて対象としたものがあります。なお、受講前に都道府県等から対象講座の指定を受けなければいけないため、あらかじめ居住している自治体へ相談する必要があることを覚えておきましょう。
一方、高等職業訓練促進給付金は、看護師、介護福祉士、保育士、歯科衛生士などの資格取得のために養成機関で修業する場合に支給されます。
いずれも就職の際に有利となるものであり、なおかつ養成機関において1年以上のカリキュラムの修業が予定されているものについて都道府県等の長が指定したものです。
社会人の学び直しに政府が提供しているその他の支援制度
3〜4章で紹介したもの以外にも、社会人の学び直しのために政府が提供している制度はまだまだあります。
本章では、その他の支援制度について紹介します。
国がどんな支援を行っているのか、引き続き広く押さえていきましょう。
マナパス
“学びのパスポート”が名前の由来であるマナパスは、文部科学省が運営している、社会人の学びを応援するためのポータルサイトです。
大学・大学院・専門学校などの教育機関で長期間にわたって学習したい場合に、希望条件で絞り込みながら講座を検索することができます。
「土日・平日夜間」「奨学金制度」「資格」など、絞り込み条件の種類も多いため、自分の希望に合った講座が見つけやすいでしょう。
検索機能のみならず、サイト内では関連コンテンツも充実しています。「在校生・修了生インタビュー」では、自分の学びのロールモデルを探せます。
「特集ページ」では、世の中の最新トレンドと社会人の学びを掛け合わせた情報を分かりやすくまとめているため、時代に即した学び直しに取り組もうとしているビジネスパーソンにぜひおすすめです。
ハロートレーニング
ハロートレーニングは、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを習得することができる公的制度です。離職者訓練や障害者訓練、求職者支援訓練など、さまざまな訓練が実施されています。
ハロートレーニングは、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。公共職業訓練は主に雇用保険受給者が対象ですが、求職者支援訓練は雇用保険を受給できない方向けです。
こちらは一定の条件のもとで、月額10万円の支給を受けながら訓練を受けることが可能です。
いずれも無料で受けることができ(テキスト代は除く)、公共職業訓練は約3カ月〜2年、求職者支援訓練は約2〜6カ月の訓練を受けます。ものづくり系や事務系、介護系など、さまざまな訓練が実施されています。
キャリア形成サポートセンター
全国の都道府県に設置されているキャリア形成サポートセンターでは、社会人であれば誰でも無料でキャリアコンサルタントによる60分間のコンサルティングを受けられます。雇用形態も問いません。
また、対面はもちろんですが、オンラインによる面談も可能です。申し込みもオンラインで手続きができます。
時間もお金もかかる社会人の学び直しに対して、高いハードルを抱えてしまう方が少なくありません。一歩を踏み出す勇気をもらうために、有識者に相談してみるのもひとつの手です。
キャリアコンサルタントへの相談を通じて、今後自分がやるべきことがきっと明確になってくるでしょう。
【2023年】政府が支援する社会人の学び直しの概要
社会人の学び直しから転職までを支援するために、政府は2023年中にも新しい制度を制定する方向で動いています。新制度では、1人当たり平均24万円が助成される予定です。
転職を希望する正社員と契約社員、派遣社員、パート・アルバイトが対象であり、経営者や個人事業主は含まれません。
民間が運営する講座を最大1年間受講できます。講座の内容はビジネススキルやプログラミングが6割以上を占めており、そのほかには医療・介護・Webデザイン・動画編集などのジャンルがあります。
なお、教養を学ぶような講座は対象に含まれていないので注意しましょう。
政府の助成を受けることで、通常よりも割安で講座を受けることが可能です。政府としては、今後3年間で合計約33万人の転職を後押しすることを目指しています。
自治体による社会人の学び直しの支援制度もある!
政府主体のみならず、自治体が無料または格安で講座を開講していることも多いです。
たとえば、「東京都デジタル人材育成支援事業」では、未経験からITエンジニアやプログラマーを目指す人向けに無料の講座が開かれています。1人ではなく、仲間と切磋琢磨しながら勉強したい方や、就職までサポートしてほしい方におすすめの講座です。
就職対策では、キャリアカウンセリングを始め、応募書類の書き方や面接の指導などを行い、受講生1人ひとりに専任の担当者がついて内定までトータルサポートします。
講座は、プログラミングコース・ITインフラコース・クラウドコースからの選択制で、受講期間は2カ月です。
また、宮崎県でも「宮崎県地域密着型IT人材育成プログラム」という、ITスキルを習得するオンライン講座が開かれています。
PCの基本操作などの初歩的な講座から、PythonやPHPといったプログラミングスキルを習得する上級コースまで揃っているのが特徴です。
学習の進め方としては、「第1ステージ」で基礎を押さえていき、こちらの受講が完了すると「第2ステージ」に進むことができ、より専門的な内容を学べます。
こちらも費用は無料で、24時間いつでも自宅で受講が可能です。自分の好きなタイミングで学ぶことができるため、まさに忙しい社会人にとっては時間を有効活用しながら学習を進められるでしょう。
さらに、会社説明会やインターンシップなどの就職支援も充実しています。
補助金を活用しながら社会人の学び直しを始めよう!
社会人の学び直しは、スキルアップや収入アップにつながる大きなチャンスです。ですが、学習のための費用負担を懸念している方が少なくないでしょう。
そこで今回は、政府や自治体による支援制度を多数紹介してきました。社会人の学び直しを後押しする動きも、国主体で活発化しています。
支援制度の種類も豊富にあるため、今回紹介した補助金を上手く活用して、学び直しの機会をぜひ積極的に作っていきましょう。
新たな知識やスキルを習得し、夢のキャリアアップを実現させてみませんか。