社会人の学び直しの必要性とは?始める方法や支援制度を解説
学校を卒業して就職し、社会人となった後も学び直しをして知識やスキルをアップデートする必要性が今高まっています。
この記事では、社会人の学び直しが必要とされる理由や、学び直しを始める方法、支援制度などを解説します。ビジネスパーソンとしてさらなるステップアップを目指すためにも、社会人の学び直しに関する理解をしっかり深めていきましょう。
日本における社会人の学び直しの現状は?
諸外国と比べると、日本では社会人の学び直しが普及しているとはいえません。
経済成長が著しい韓国などでは、転職がキャリアアップにつながるといった考えが根付いていますが、日本人はまだ転職に対してどこかネガティブなイメージを抱いている人も少なくないようです。そのため、転職目的で新たな知識やスキルを主体的に学ぼうとする人も現状あまり多くはありません。
また、日本では、有給で就学ができる制度を導入している企業がとても少ないです。社会人の学び直しは基本的に仕事と両立しながら取り組んでいく必要がありますが、企業側の理解や協力体制が整っていないのも現状の一因といえます。
2022年に内閣府が行った「生涯学習に関する世論調査」では、きっかけがつかめない、仕事が忙しくて時間がないなどの理由で学び直しができないと答えた人が多くいました。社会人の学び直しが注目を集めているのは確かですが、現場レベルで考えると学習環境の整備はまだまだ道半ばなのが日本の現状です。
社会人の学び直しが必要とされている背景
社会人の学び直しはなぜ今求められているのでしょうか。社会人の学び直しが必要とされている背景について、2つのポイントに焦点を当てながら解説します。
社会情勢や周囲の環境が急速に変化している
社会情勢や周囲の環境が急速に変化していることが、社会人の学び直しの必要性にまず大きく寄与しています。発展の一途をたどっているデジタル技術は、ビジネスシーンでも広く活用されています。
AI技術も目まぐるしいスピードで進歩し、これまでの方法では通用しない業務が増えています。これまで培ってきたスキルだけでは対応しきれない状況がすでに発生しつつあるため、時代の流れに見合った新たな知識をつけていく必要があるのです。
例えば、販売促進においてはマーケティングやデジタルの知識が必ず求められます。変わりゆく社会の中で活躍し続けるためには、その時々の情勢に応じた知識やスキルをしっかり身につけておくことが重要といえるでしょう。
定年後も働き続ける人が増えている
少子高齢化の影響で生産人口が減少しているため、就労期間の長期化が珍しいものではなくなってきました。「人生100年時代」といった言葉も取り沙汰され、定年後も働き続ける人が増えつつあります。
さらには、終身雇用や年功序列といった従来の制度も崩れてきているため、第2のステップとして前向きに転職を検討するビジネスパーソンも少なくありません。何歳になっても知識とスキルをアップデートして、新たなキャリアを追求する人が増えています。
年齢関係なく長く働き続けるためにも、社会人の学び直しは有効といえるのです。
社会人の学び直しの3つの種類とは
社会人の学び直しには、リスキリング・リカレント教育・生涯学習の3種類があります。本章では、それぞれの特徴について解説します。
類似したワードではあるため、意味を混同しないように区別して理解しておくようにしましょう。
リスキリング
リスキリングとは、企業主体で行う学び直しのことです。新たな仕事を担ったり、または仕事の大幅な変化に対応したりするために必要なスキルを獲得するケースが多いです。
特に発達が著しいデジタル技術などは、適宜知識やスキルをアップデートしていく必要があります。
さらに、リスキリングは、今はまだ社内にない仕事やできる人がいない仕事を新たに獲得するうえでも有効的です。時代の変化に適応し、業務の幅を広げていくことにつなげられるでしょう。
また、休職や離職はせず、仕事を続けながら学習を進めていくのもリスキリングの特徴です。
リカレント教育
リカレント教育とは、個人主導で行う学び直しのことです。社会人がそれぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められるスキルを向上させることを目的としています。
リスキリングが企業主体であるのに対し、リカレント教育は政府や各教育機関が中心となって学びの場を提供しているのも特徴です。諸外国においては仕事から離れて教育を受けることを意味していますが、日本では仕事を休まず学び直すスタイルもリカレント教育と呼ばれています。
具体的には、資格取得のための講座や、大学・大学院などでのカリキュラムを通して受けることが可能です。いずれも年齢や立場を超えた学習環境であり、仕事における知識のアップデートや、転職・副業につながるスキルの習得、働くことから離れた後の社会復帰などを目的として学ぶ人が多いです。
生涯学習
生涯学習とは、豊かで充実した人生を送るために生涯にわたって学び続けることです。
リスキリングやリカレント教育とはやや異なり、仕事に関連した知識やスキルの習得のみならず、家庭・学校・地域で行われる学習なども含まれます。
例えば、スポーツやボランティア活動、趣味に関連したサークル活動、PTA活動などが生涯学習にあたります。
仕事における学びだけでなく、好きなことを追求したい人や、地域や家庭での活動をより充実したものにしたい人、同じ目的を持った新たな仲間とのコミュニケーションを楽しみたい人などにおすすめです。
社会人の学び直しの始め方
いざ学び直しを始めてみようと思っても、まず何から手をつけたらいいのかわからない人も決して少なくないのではないでしょうか。
そこで本章では、社会人の学び直しの始め方について解説します。
何を学ぶか決める
学び直しを始めるにあたって、まずは何について学ぶのか決めていく必要があります。その際、今後のキャリアプランの計画を立てるようにすると、自分が学ぶべき内容を絞っていきやすいです。
将来的にどんなキャリアを歩んでいきたいのか、まずは自分の気持ちを改めて整理しましょう。同時に、今持っている経験やスキル、資格を棚卸ししてみるのもポイントです。
「今自分はどんなことができるのか」「さらに強化していきたい部分はどこなのか」細かく書き出してみるといいでしょう。
可視化することで、自分に足りないものも自ずと見えてくるのではないでしょうか。
どこで学ぶか決める
学びの内容のほか、それをどこで学ぶのか決めるのも大事なステップです。
仕事と両立しながら学び直しをする場合、忙しい合間を縫って学習を進めていく必要があります。社会人向けの講座を提供している大学であれば、学習環境がかなり整備されています。
なかには通信制を導入している大学もあり、自分のライフスタイルやワークスタイルに見合った環境を選ぶといいでしょう。教室に通うのが難しいのであれば、動画中心の講座やオンラインでの学習講座を選ぶのもおすすめです。
ほかにも、学びたいジャンルの本を読んだり、資格取得に向けて自分で問題集を解いたりするのもいいでしょう。
これらは比較的リーズナブルに始めやすい学び直しであるため、あまりハードルを感じずに学習を進めていくことができます。日頃の生活に支障のない範囲で、効率良く取り組むことのできる方法や場所を選ぶようにしましょう。
社会人の学び直しで利用できる支援制度
社会人の学び直しにおいては、さまざまな支援制度を利用できます。最後となる本章では、支援制度の内容について詳しく解説します。
どんな制度があるのかあらかじめ把握し、学び直しをする際に上手く活用できるようにしましょう。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度とは、働く人の資格取得やキャリア形成を支援する制度です。厚生労働大臣が指定した約1万4000の講座を受講すると、受講料の一部が支給されます。
講座はレベルに応じて、「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類に分けられ、それぞれで給付金が異なります。専門実践教育訓練は最大で受講費用の70%、特定一般教育訓練は受講費用の40%、一般教育訓練は受講費用の20%が支給されます。
また、教育訓練給付制度の対象となるためには、雇用保険の加入期間などの条件があり、条件を満たせていない場合は制度の利用ができません。
公的職業訓練(ハロートレーニング)
公的職業訓練(ハロートレーニング)は、希望する仕事への就業を叶えるために必要な職業スキルや知識などを身につけられる制度です。全国のハローワークが主体となって提供しており、無料で利用できます。
また、教育訓練給付制度とは違い、雇用保険に加入していなくても一定の条件を満たしていれば申し込みが可能です。手当を受けながら、事務、IT、介護、デザインといった多種多様な分野の訓練を受けられます。
就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業
就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業は文部科学省が行っている支援制度です。
非正規雇用の人や失業中の人のほか、キャリアアップや転職・副業のためのスキルを向上したい人を主な対象としています。全国の大学や専門学校で開講されており、いずれも2〜6カ月の短期集中型です。
社会的なニーズが高まっているDX(AI・IoT)や、医療、介護、地方創生、女性活躍等をテーマにしたプログラムを、基礎から応用まで幅広く採択しています。テキスト代等が発生するケースはありますが、受講費用は原則無料です。
キャリアコンサルティング
キャリアコンサルティングは、今後のキャリアなどについて、キャリア形成・学び直し支援センターでキャリアコンサルタントに無料で相談できる制度です。
転職やスキルアップに関することのみならず、仕事とプライベートのバランスについての悩みや、定年を見据えた働き方など、キャリアにまつわるさまざまな問題や課題をキャリアコンサルタントが一緒に考えてくれます。また、オンラインでの相談も可能です。
なお、現在就業している人を対象としています。
社会人の学び直しを始めてキャリアアップを目指そう
社会人が学び直しを始める際は、どの分野をどこで学ぶのか決めるのがまず重要なポイントです。
また、学びを継続しやすいような支援制度も充実しているため、これらは積極的に利用してみましょう。ただ、やはり日本は諸外国と比べると、社会人の学び直しに関しては遅れをとっています。変化が激しく正解のない時代で一番必要なのは、変化に対応できる学びを怠らない姿勢だといえます。
ビジネスマンに向けた動画オンデマンドサービス「LIBERARY」は、社会人の学び直しが必要だと感じているものの何を学ぶべきなのかが分からないという人におすすめです。
まずはどんな場面でリベラルアーツが活きるのか、自らの置かれている状況を踏まえ、リベラルアーツの世界の入り口を体験してみてはいかがでしょうか。変わり続ける時代に対応できる人材になるためにも、ぜひ主体的な学び直しを行ってみましょう。