センスメイキングとは?組織の意思決定を改善する5つの効果的な手法

リベラルアーツ

はじめに

 現代のビジネス環境は、かつてないほど複雑で、不確実性に満ちています。グローバル化、技術革新、社会変化が急速に進む中で、組織が適切な意思決定を行うことは、ますます困難になっています。このような状況下で、センスメイキングの重要性が高まっています。

 センスメイキングは、複雑な情報や状況を理解し、意味づけを行うプロセスです。 組織の意思決定において、センスメイキングは不可欠な役割を果たします。しかし、多くの組織では情報の過負荷やバイアス、コミュニケーションの断絶など、さまざまな課題に直面しています。これらの課題が適切な意思決定を妨げる要因となっているのです。

 本記事では、センスメイキングの概念と、組織の意思決定を改善するための5つの効果的な手法について詳しく解説します。さらに、センスメイキング能力を向上させるためのリベラルアーツの重要性や、KDDI株式会社が運営するLIBERARY(リベラリー)を活用した学習方法についても紹介します。

センスメイキングとは何か

 センスメイキングは、カール・ワイクによって提唱された概念で、「人々が経験する出来事や状況に意味を与えるプロセス」と定義されます。 つまり、複雑で曖昧な情報や状況を理解し、解釈し、意味づけを行う認知的プロセスのことを指します。

組織におけるセンスメイキングの役割は非常に重要です。日々変化する環境の中で、組織は常に新しい情報や状況に直面します。センスメイキングは、これらの情報や状況を適切に解釈し、組織の目標や戦略に結びつけることを可能にします。
具体的には、以下のような場面でセンスメイキングが重要な役割を果たします。

  • 市場動向の分析と予測
  • 顧客ニーズの理解
  • 組織内の問題や課題の特定
  • 新たな機会の発見
  • リスクの評価と管理

 センスメイキングを効果的に行うことで、組織は環境の変化に柔軟に対応し、適切な意思決定を行うことができます。また、組織メンバー間で共通の理解を形成することで、協力体制を強化し、組織全体の方向性を明確にすることができます。

センスメイキングが組織にもたらす5つの効果

 センスメイキングは、組織に多くの利点をもたらします。以下に、その主要な5つの効果について詳しく説明します。

 センスメイキングを効果的に行うことで、組織は環境の変化に柔軟に対応し、適切な意思決定を行うことができます。

不確実性の低減

 センスメイキングの第一の効果は、不確実性の低減です。複雑な環境において、情報の解釈や状況の理解は容易ではありません。しかし、センスメイキングのプロセスを通じて、組織は不確実な状況をより明確に理解し、適切な行動を取ることができます。

関連記事:不確実性とは?定義から理解する現代社会の課題と対処法

 例えば、新しい市場に参入する際、センスメイキングを活用することで、市場動向、競合状況、顧客ニーズなどを総合的に分析し、より確実な戦略を立てることができます。不確実性を低減することで、リスクを軽減し、投資を最適化することが可能となります。

情報の効果的な解釈と共有

 センスメイキングの二つ目の効果は、情報の効果的な解釈と共有です。組織内で発生する膨大な情報を、単に収集するだけでは意味がありません。センスメイキングを通じて、情報に意味を与え、組織の文脈に沿って解釈することが重要です。

 さらに、解釈された情報を組織全体で共有することで、共通の理解が形成されます。これにより、部門間の協力が促進され、組織全体の意思決定の質が向上します。例えば、顧客フィードバックの解釈と共有により、製品開発、マーケティング、カスタマーサービスなど、さまざまな部門が連携して顧客満足度の向上に取り組むことができます。

組織の適応力向上

 三つ目の効果は、組織の適応力の向上です。ビジネス環境は常に変化しており、組織はその変化に迅速に適応する必要があります。センスメイキングは、環境の変化をいち早く察知し、その意味を理解することを助けます。

 これにより、組織は変化に対して積極的に対応し、必要な変革を迅速に実行することができます。例えば、技術革新による業界の変化をいち早く察知し、新たなビジネスモデルへの移行を円滑に進めることができます。

イノベーションの促進

 センスメイキングの四つ目の効果は、イノベーションの促進です。新しいアイデアや創造的な解決策は、既存の情報や経験を新たな視点で捉え直すことから生まれることが多いです。センスメイキングは、このような創造的な思考プロセスを支援します。

 組織メンバーが異なる背景や専門知識を持ち寄り、多様な視点から状況を解釈することで、革新的なアイデアが生まれやすくなります。例えば、異なる部門の社員が協力してプロジェクトに取り組む際、センスメイキングを通じて新たな製品やサービスのアイデアが生まれる可能性が高まります。

リーダーシップの強化

 最後に、センスメイキングはリーダーシップの強化にも貢献します。効果的なリーダーは、複雑な状況を理解し、組織のメンバーに明確なビジョンと方向性を示す必要があります。センスメイキングは、リーダーがこの役割を果たすための重要なスキルです。

 リーダーは、センスメイキングを通じて組織の内外の情報を適切に解釈し、将来の展望を描くことができます。また、その解釈を組織メンバーに効果的に伝達することで、組織全体の方向性を明確にし、メンバーの動機付けを高めることができます。

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センスメイキングを改善する5つの効果的な手法

 センスメイキングの能力を向上させるために、組織は以下の5つの手法を活用することができます。これらの手法を効果的に実践することで、組織の意思決定プロセスを大幅に改善することが可能です。

多様な情報源の活用

 一つ目の手法は、多様な情報源の活用です。単一の情報源に頼るのではなく、さまざまな角度から情報を収集することが重要です。これには、内部データ、市場調査、顧客フィードバック、業界レポート、ソーシャルメディアの分析など、幅広い情報源が含まれます。

 多様な情報源を活用することで、より包括的な視点を得ることができ、偏った解釈を避けることができます。例えば、新製品の開発において、技術部門からの情報だけでなく、マーケティング部門、カスタマーサービス部門、さらには外部の専門家の意見を取り入れることで、より確実な判断ができるようになります。

クリティカルシンキングの促進

 二つ目の手法は、クリティカルシンキングの促進です。情報を単に受け入れるのではなく、批判的に分析し、評価する能力が重要です。クリティカルシンキングは、情報の信頼性を判断し、隠れた前提や偏見を明らかにするのに役立ちます。

 組織内でクリティカルシンキングを促進するためには、以下のような取り組みが有効です。

  • 定期的なディスカッションセッションの開催
  • 仮説検証型のプロジェクト推進
  • 異なる視点からの意見を積極的に求める文化の醸成

 これらの取り組みにより、組織メンバーは情報をより深く分析し、多角的な視点から問題を捉えることができるようになります。

関連記事:クリティカルシンキング(批判的思考)とは?クリティカルシンキングの定義・重要性・鍛える方法について解説

コラボレーティブ・センスメイキング

 三つ目の手法は、コラボレーティブ・センスメイキングです。これは、組織のメンバーが協力して情報を解釈し、共通の理解を形成するプロセスを指します。個人のセンスメイキングには限界があるため、多様な背景や専門知識を持つメンバーが協力することで、より豊かな解釈が可能になります。

 コラボレーティブ・センスメイキングを促進するためには、以下のような取り組みが効果的です。

  • クロスファンクショナルなチーム編成
  • 定期的なブレインストーミングセッション
  • オープンな対話を促進する組織文化の構築

 これらの取り組みにより、部門間の壁を越えた協力が促進され、組織全体の知恵を結集したセンスメイキングが可能になります。

ストーリーテリングの活用

 四つ目の手法は、ストーリーテリングの活用です。複雑な情報や状況を、わかりやすいストーリーの形で伝えることで、理解を深め、共感を得ることができます。ストーリーテリングは、抽象的な概念を具体化し、情報に感情的な要素を加えることで、より印象的で記憶に残りやすいものにします。

 効果的なストーリーテリングのためには、以下の点に注意が必要です。

  • 明確な構造(始まり、中間、終わり)を持たせる
  • 具体的な例や事例を使用する
  • 聴衆の関心や経験に結びつける

 ストーリーテリングを活用することで、複雑な状況や戦略を組織全体で共有し、共通の理解を形成することが容易になります。

継続的な学習と振り返り

 最後の手法は、継続的な学習と振り返りです。センスメイキングは一回限りのプロセスではなく、常に進化し続ける必要があります。過去の経験から学び、新しい情報や視点を取り入れることで、センスメイキングの質を向上させることができます。

 継続的な学習と振り返りを促進するためには、以下のような取り組みが効果的です。

  • 定期的なレビューミーティングの実施
  • 失敗からの学習を奨励する文化の構築
  • 外部の専門家や研修プログラムの活用

 これらの取り組みにより、組織は常に最新の知見を取り入れ、センスメイキングの能力を継続的に向上させることができます。

リベラルアーツとセンスメイキングの関係

 リベラルアーツとセンスメイキングは、密接な関係にあります。リベラルアーツは、広範な学問分野を横断的に学ぶ教育方法であり、批判的思考力、創造性、コミュニケーション能力などの汎用的スキルを養成することを目的としています。

関連記事:リベラルアーツとは?現代社会で求められる教養を身につけるための学び方

 リベラルアーツの学習は、以下の点でセンスメイキング能力の向上に貢献します。

  • 多角的な視点の獲得:様々な学問分野の知識を得ることで、問題を多面的に捉える能力が向上します。
  • 批判的思考力の強化:異なる理論や見解を比較検討することで、情報を批判的に分析する力が養われます。
  • 創造的思考の促進:異分野の知識を組み合わせることで、新たな発想が生まれやすくなります。
  • コミュニケーション能力の向上:多様な主題について議論することで、複雑な概念を効果的に伝える力が磨かれます。

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コミュニケーション能力を高める5つの効果的な方法

 これらのスキルは、センスメイキングのプロセスにおいて不可欠です。 複雑な情報を解釈し、意味づけを行い、それを他者と共有するためには、リベラルアーツを通じて培われる広範な知識と汎用的スキルが重要な役割を果たします。

リベラルアーツを学ぶ方法

 リベラルアーツを学ぶ方法は多様ですが、従来の学習方法としては、大学のリベラルアーツ教育プログラムや、専門書の読書、オンライン講座の受講などが挙げられます。しかし、これらの方法は時間や場所の制約があったり、体系的な学習が難しかったりする場合があります。

 そこで注目されるのが、KDDI株式会社が運営するLIBERARY(リベラリー)です。KDDI株式会社が運営するLIBERARY(リベラリー)は、リベラルアーツの学習に特化したVODサービスで、以下のような特徴と利点があります。

  • 幅広い分野の講義:哲学、歴史、文学、心理学、芸術など、多岐にわたる分野の講義を提供しています。
  • 第一線の専門家による講義:各分野の有識者が講師を務め、深い洞察と最新の知見を提供しています。
  • 柔軟な学習スタイル:時間や場所を選ばず、自分のペースで学習を進められます。
  • 継続的なコンテンツ更新:最新のトピックスや新たな分野の講義が定期的に追加されます。

 LIBERARYを活用したリベラルアーツ学習の効果は、以下のような点で期待できます。

  • 幅広い知識の獲得:多様な分野の講義を通じて、総合的な教養を身につけることができます。
  • 思考力の向上:異なる分野の知識を関連づけることで、創造的・批判的思考力が磨かれます。
  • キャリア開発への活用:幅広い知識と柔軟な思考力は、ビジネスにおける問題解決や意思決定に役立ちます。
  • ライフロングラーニングの実践:生涯にわたって学び続ける姿勢を養うことができます。

 また、LIBERARYでは、「センスメイキング――本当に重要なものを見極める力」の著者である、クリスチャン・マスビアウ氏の講義があります。7日間無料で視聴ができるので、まずはおためし受講をしてみてはいかがでしょうか?
クリスチャン・マスビアウ氏の講義

センスメイキングとリベラルアーツの実践

 センスメイキングとリベラルアーツの学びを組織や個人のキャリア開発に活かすためには、具体的な実践が重要です。 以下に、組織での適用例と個人のキャリア開発における活用方法を紹介します。

組織での具体的な適用例


  • クロスファンクショナルプロジェクト:
    異なる部門のメンバーでチームを構成し、リベラルアーツの知見を活かしたセンスメイキングを行います。例えば、新製品開発プロジェクトにおいて、技術、マーケティング、デザイン部門のメンバーが協力し、多角的な視点から市場ニーズを分析し、革新的な製品コンセプトを生み出すことができます。

  • 定期的な学習セッション:
    LIBERARYの講義を活用した学習会を定期的に開催し、組織全体の知識レベルを向上させます。これにより、日々の業務におけるセンスメイキングの質が向上し、より適切な意思決定が可能になります。

  • ケーススタディ分析:
    過去の成功事例や失敗事例を、リベラルアーツの視点を取り入れて分析します。例えば、歴史的な企業の成功と失敗を、経済学、心理学、社会学などの観点から多角的に検討することで、より深い洞察を得ることができます。

個人のキャリア開発における活用


  • スキルセットの拡大:
    LIBERARYを活用して、自身の専門分野以外の知識を積極的に吸収します。これにより、より柔軟な思考力と問題解決能力を身につけ、キャリアの選択肢を広げることができます。

  • イノベーション能力の向上:
    異分野の知識を組み合わせることで、新たな発想や革新的なアイデアを生み出す能力を磨きます。これは、起業や新規事業開発などのキャリアパスにおいて特に有効です。

  • リーダーシップスキルの強化:
    哲学や心理学などの学びを通じて、人間理解を深め、より効果的なリーダーシップを発揮する能力を養います。これは、管理職やプロジェクトリーダーとしてのキャリア発展に役立ちます。

  • グローバル視点の獲得:
    歴史や文化に関する幅広い知識を身につけることで、グローバルビジネスにおける異文化理解や交渉力を向上させます。

まとめ

 センスメイキングは、複雑化する現代のビジネス環境において、組織の意思決定を改善し、競争力を高めるための重要なプロセスです。 本記事で紹介した5つの効果的な手法を実践することで、組織は不確実性を低減し、情報を効果的に解釈・共有し、適応力を向上させ、イノベーションを促進し、リーダーシップを強化することができます。

 リベラルアーツの学習は、センスメイキング能力の向上に大きく貢献します。多角的な視点、批判的思考力、創造性、コミュニケーション能力など、リベラルアーツを通じて培われるスキルは、複雑な情報を解釈し、意味づけを行う上で不可欠です。

 KDDI株式会社が運営するLIBERARY(リベラリー)は、リベラルアーツの学習を効果的にサポートするVODサービスとして、組織や個人のセンスメイキング能力向上に寄与します。時間や場所の制約を受けずに、第一線の専門家から幅広い分野の知識を学べるLIBERARY(リベラリー)は、継続的な学習と成長を支援します。

 組織と個人がセンスメイキングとリベラルアーツの学びを実践に移すことで、変化の激しい現代社会において、より適応力が高く、創造的で、効果的な意思決定を行うことが可能になります。LIBERARY(リベラリー)を活用したリベラルアーツの学習は、この実践への第一歩として、お勧めします。

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