【講義紹介】【家政学】土井善晴「食事を初期化する料理学」
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【家政学】土井善晴「食事を初期化する料理学」
料理をすることで人間は人間になったと言えます。料理は単に美味しいものを食べたいからではなく、生きていく戦略として行われてきました。料理は人間のクリエーションの始まりであり、現在に至るまで続けられています。他の多くの発明は代替されることがありますが、料理だけは常に人間が行い続けている唯一の活動です。
哲学者ハンナ・アーレントは「人間の条件」の中で、地球と労働を人間を形作る基本条件として挙げています。地球は私たちの住処であり、労働は人間が生きていくために必要な活動です。料理や身の回りのことを整える活動は、人間を人間たらしめるものです。
労働と仕事を区別することが重要で、仕事は物を作る行為ですが、労働は目に見えないもの、つまり人間の条件を形作るものです。料理もまた、人間を人間たらしめる重要な活動の一つです。私たちが日常的に行う当たり前の存在を軽視する傾向がありますが、それは経済的に効果があるとされるものを優先してきた結果です。地球や人と人とをつなぐ愛情などが犠牲になってきました。
幸せになる方法を探求する中で、料理は重要なヒントを提供してくれます。料理は命をつなぐものであり、健康を保つため、人と仲良くするため、また快楽を得るために行われます。しかし、料理の意味はこれだけではなく、愛情を育むもの、教育の手段、イマジネーションを発達させるものとしての役割もあります。
料理を行うことで、私たちは過去と未来、日常の生活と地球という大きなものをつなぐ意味を見出すことができます。日常の中で当たり前に美味しいもの、例えば山菜の苦味や季節の旬なものを通じて、小さな喜びを見つけることができます。これらは私たちの生活に潤いを与えます。
西洋的な料理の考え方と和食の考え方は異なります。日本料理は何もしないことを最善とし、食材をそのまま美味しくすることに重点を置いています。これはお刺身などで象徴されるように・・・
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